取材:Laura Sutil
撮影:Paco Montanet
Ferretería by EGO (フェレテリア・バイ・エゴ)
独特の趣で第一印象から期待を誘うこちらお店は「Ferretería by EGO(フェレテリア)」という名のバルレストラン。店に入ってすぐ、木製の収納戸に覆われたインパクトのあるカウンターが目を惹きます。
店名をそのまま読んで訳すと「エゴによる金物屋」。といっても、エゴイストな金物職人がいるわけではなく、EGOはコルタドール・マエストロであるEmilio García Ortigosa(エミリオ・ガルシア・オルティゴサ)さんの名前の略です。
エミリオさんの職業であるコルタドールとは、生ハムを切る職人のこと。生ハムの美味しさを最大限引き出すコルタドールは非常に繊細な技術が求められます。スペインではコルタドールのコンクールが行われているのですが、数々の名職人の中でもエミリオさんは極上の腕を持つことで知られる地元の有名人です。
生ハムの美味しさはカットで決まる!
硬さ・乾き・脂の乗り具合などを計算に入れたうえでの精巧な生ハムカット。
切り方次第で変わってくる奥深い生ハムの口どけ。
時には異なる部位が混ざり、1枚に贅沢な美味しさが重なり合います。
そんなプロのカットと味の違いを体験してみたい人は「Degustación de jamón por cortes(デグスタシオン・デ・ハモン・ポル・コルテス)」を注文してみてください。さまざまにカットされた生ハムを試すことができる一皿です。
また、世界一高いという生ハムも置かれています。そのお値段、なんと5000ユーロ!
生ハムのほかに、ワインやビールのおつまみとなる料理ももちろん揃っています。
スペインらしいテイストを試したければ、イベリコ豚のクロケッタ(スペイン風コロッケ)、スモークされたセシーナ(牛肉の生ハム)、カンタブリア産のイワシ、ガリシア産ムール貝のエスカベッチェ(南蛮漬け)、自家製のモルシージャ(血入りソーセージ)あたりを。
古い金物屋の内装が独特の趣を演出
さて、この店は内装に目を止めずにスルーすることはできません。
1888年、アトーチャ通り57番のこの場所に金物屋が開店しました。当時のインテリアは今でもそのまま残され、この店の名にもその歴史が表わされています。
エミリオさんのビジネスパートナーであるマリア・アントニアさんは、アートが専門分野なのだとか。空間のビジュアル的センスを見れば、それも納得です。
古い木材で囲まれたカウンターは、おつまみと共に軽く1杯を楽しめるバルスペース。奥へと進むと、かつて修道女たちが利用していたというレンガ造りの部屋があります。そこは、外の喧騒を忘れて好きな人とだけのプライベートな時間を過ごせる個室です。
世界一を目指すコルタドール
店ではエミリオさんが指導する生ハムカットの講座やワークショップが不定期で開催されています。また、カットの違いがわかる生ハムのテイスティング会が行われていることも。
世界一のコルタドールを目指したいと語る、エミリオさん。
マドリードで美味しい生ハムを追求するなら、一度彼のカットをお試しあれ。
※この内容は2018年取材時のものです。営業時間やメニュー等、サービス内容は変更される場合があります。